新聞のブラックボックス その3

営業体制の再構築

営業スタッフにインセンティブを

 日本新聞協会の資料では、集計した98社の従業員数は2017年で42248人になっている。01年と比較し27%、4分の1減少した。このうちの記者数はこの間、6%余りしか減っておらず、制作、営業部門の要員減少が大きい。

 経営基盤の維持、強化のために必要なことの一つは、大きな変化が生まれている広告、販売、事業部門の組織の見直し、改革だ。
 広告媒体としての新聞は、部数の低下とスマホなどネット媒体の普及とともにさらに存在感がなくなりつつある。そして販売局も部数減で従来の要員数は不要なはずだ。

   新聞社は今一度、自らの強み、弱みを検証するSWOT分析をし、そのうえで営業系の体制の再構築が必要だろう。ニュース、情報という商品をコアに、そこにどんなサービスを加えて新商品、新事業を作るか。
   これまで別項(「新聞経営が見落としたもの その2」)で紹介してきたように、営業セクションは市場を知る貴重な部門でもある。
   ここに機動性を与え、新聞社の強み、経営資産を生かした新事業の開発を託すべきだ。

   その新市場開発のためにも、今一度営業系のスタッフの育成、強化を考えたい。先の別項でも触れたが、新聞各社の営業系にはまだまだ優秀な人材が残っている。そして彼らは市場動向を一番肌で感じている。
 記者は現場で育つという考え方が強い新聞社内では、編集でもなかなか社内教育制度、システムが拡充しない。しかし記者の留学や研修などを制度化している社は多い。それに比べ営業系の研修制度などはほとんどないのではないか。
 

 店舗経営指導ができる販売担当員に
 販売担当員の主要業務は販売店経営の支援だ。販売担当員に店舗経営の指導、助言する力量を与えるためも研修制度を設ける。そのうえで信頼されたラストワンマイルを生かした新ビジネスを提案させるためには、担当員自ら経営のノウハウの研鑽と情報収集が欠かせない。

 販売店は仕入れ、在庫管理がない特別な中小企業、店舗経営者でもある。しかし今後は地域の情報基地あるいは信頼サービスセンターとしても生き残りも可能だ。    その為に、中小企業経営の全般に見通しのきく販売担当員の支援が必要だ。
 またその技量と知識を持つこと自体、販売担当員の目指す課題、インセンティブになる。販売部門の活性化に繋がるはずだ。

 広告についても別項で代理店への依存による営業力の衰退を指摘した。
新聞広告費がインターネット広告費に抜かれたのが2011年3月だった。以降両者の売上格差は開く一方で、2017年にはインターネットが1兆5000億円余り、新聞が約5100億円と3倍にまでになった。

 この急速なネット広告への対応が新聞各社ともできていない。広告費が逆転した2011年以前、ネット広告は新聞広告を扱う代理店の子会社のメディアレップが主に扱っていた。ネット広告の将来性がまだ軽視されていた。当時大手広告代理店においても、系列のレップへの異動はいささか都落ちの空気があったのではないか。
 
 それに影響されてか新聞社の広告担当のスタッフにも、率先して社内のメディア局などネット配信部局に異動を希望する者は少なかった。ウェブ広告に夢を描く若手もほとんどいなかった。
 
 ネット、ウェブ広告は、新聞社からすると部数による媒体効果に拘束されない新たな市場、ブルーオーシャンだった。そして広告効果を正確に把握できるというテレビ、新聞にない強みもあった。
 ただその広告には、ウエブデザイン、サイト制作など全く新しいといノウハウを必要とした。広告の制作から、SEO、効果測定 マーケティングといずれもネット系のIT技術、ノウハウが必要だった。

 今から考えると、ヤフーなどのニュース配信が始まったネット揺籃期には新聞社はこの技術部門でも有利な位置にあった。
 新聞社にはもともと高速輪転機の運用制御や配送、情報の集配信システムなどでコンピュータ制御に取り組む技術スタッフがいた。またワードプロセッサからパソコン入力に変わり、テキスト入力からサーバなど集配信システムにも知見を持つスタッフが増えていた。つまりこの中から選抜し、メディア部門の編集、広告、マーケティングのセクションに技術スタッフを充てることは十分できたはずだ。
 ただ前述したように、技術部門のスタッフにも新聞製作と印刷の本業意識、プライドが壁になり、ネット技術者が輩出するには至らなかった。
 
 結論から言えば、新聞社のメディア編集がヤフーなどに負けたように、広告部門でもネット市場への体制を築くことに遅れてしまった。ネット将来性に気づき、挑戦しようとする人間は新聞社広告セクション内でも少数であり、広告からネットによる物販、サービスの売り込みというEC市場への参加など望むべくもなかった。

 新聞社の広告は、企画提案から売り込む時代に入っている。新聞社が広告を掲載する際の内容審査は、その厳しさで定評がある。新聞の信頼性を保つため積み重ねえてきた営業ノウハウはまた優位性を持っているはずだ。それをベースにクライアントの立場に視点を置き、新聞、テレビ、ネット、その他のプロモーションなど総合的な広告提案を行う、それが広告営業の目標になるのではないか。

 その提案力を身に着けるためにも、新聞社の広告スタッフにも効率的な研修と、業務改革が必要だと思う。
 
 事業部門も含め、新聞の営業系の従業員の研修支援制度を整えること。また経営アドバイザーや中小企業診断士、社会保険労務士、あるいは各種ウェブ資格など資格所得者の優遇制度があってもいい。それが編集主体の社風の中で消極的になりがちな営業スタッフのインセンティブを向上させ、彼らが経営再建への方途を見いだしてくれるのではないか。

この項続く