自立した老いとは 老いの心得 その1

自立した老いとは 老いの心得 
その1 事故を防ぐために

 元小学校長だった加藤盛夫さんの手記の紹介を続けます。

 加藤さんは2001年(平成13年)に90歳を超えました。それを機に小冊子に随想をまとめています。その主題は「老いの心得」です。最近高齢者の交通事故が目立ちますが、ここには老いた者がどのような姿勢で暮らせばいいのか、そのヒントが読み取れると思います。

小冊子の冒頭は以下の文章で始まります。

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 おかげさまで90歳を越えました。友人知人の多くが幽明境を別にして、本当に生き残りの感を抱いております。もう遠慮無く、私は老人ですと言えるような気分になりました。
 老人として生きている人間の、老人として心に浮かぶあれこれを、暇に任せて少しずつ書き記してみたいと思います。         平成13年6月19日 盛夫

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そこからの抜粋を以下に紹介します。

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自転車とのおつきあい

 足腰がひどく弱ったのでごく近い所へ行くにも歩行困難となりました。そのため自転車の利用が多くなりました。まだ車椅子でないだけ有難いことです。

 このころやっと気の付いたことですが、自転車に乗るのは脚と腰のバランスで動いていることです。子供のころ、まだ自転車を習い始めた時は、すごく不安で必死になってハンドルにしがみついていました。ハンドルを握る手に力を入れれば入れるほど自転車の動きは不安定になります。
 段々と自転車に乗ることが上手になると、自然に脚と腰でバランスを取り推進することができるようになりました。そうなるとハンドルの方はごく軽く握っておればよくなり、手に力を入れなくてもいいようになり、不安なく気軽に自転車に乗れるようになりました。

 ところが齢をとって足腰が弱くなったこの頃では、子どもの頃の習い事で始めた様に脚と腰で自転車のバランスを取り、推進することができなくなりました。自然とハンドルを執る手と肩に力が入り、その結果自転車の運転が昔の習い始めのようになり、とっさの変化に応じることができなくなりました。平衡感覚も衰えて、狭い所を通ったり対向の人や自転車があるとひどく不安になり、ハンドルを握る手や肩に不要な力が入って運転が不安定になります。自転車も若い時のように気楽な乗り物では無くなりました。

 そして学んだことは、「待つことの効用」です。怖いと思ったら自転車を停めたり降りたりして待つことです。どうせゆっくりした時間を生きている老人です。一歩先に行かなくても下車して待てばいいのです。

 待てば安全です。譲って待てば感謝してもらえます。老人になってやっと待つこと譲ることの効用を学びました。
 颯爽と風を切って走るのも自転車の楽しみですが、老人にとっては足腰の弱りを助けてもらう大切な道具です。この大切な道具と上手につき合う為に、老人としては「待つこと」「譲ること」をしっかりと身につけようと思います。危ないと感じたら車を停め降りること。それが老人の生活の智慧であり老人らしい生き方だとやっと気づき始めました。
 
 狭い道で向こうからくる人や車のために自転車を降りて待つ。「有難う」と言ってくれたり、笑顔で会釈してくれたりする。老人になって知らぬ人から「有難う」と言ってもらったり笑顔をいただくことは、お金に恵まれるよりもっと嬉しいことです。
 変化の少ない老人生活にそれは貴重な恵みになります。
 それだけで一日幸せになれるのです。

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