自立した老いとは 恩師の書簡より      その6

 平成14年(‘02年)2月16日 加藤さん91歳
(加藤さんから原田さんへの手紙)

 暖かくなったと思うと、きびしい寒波の日がやって来たので、春はまだまだのようですが、お変わりなく元気に忙しいことでしょう。開設する新学科の学生募集の状況はいかがですか。軌道に乗るまではまだいろいろ御苦労の多いことでしょう。御健闘を祈っております。

                                  小生も
なんとかやっています。足腰が弱りで歩行が困難なのは閉口ですが、年齢を考えればそれも仕方ありません。座ったり腰掛けたりしていれば、なんともないので有難いことだと思っています。乱筆でさぞ御迷惑かとは思いながら、手紙を書く気になるだけでもまだましだと思っています。

 近頃、教育問題、教師の資質問題、児童生徒の学力問題など、教育のあれこれが政治の課題にのぼっていることを新聞やテレビニュースやらで目にすると、もう今では教育など全く関係ない暮らしをしていますが、それでもあれこれ考えさせられます。雀百まで踊り忘れずのたぐひでしょうか。話す相手も無く、ときどきノートの端に思いついたこと(多くは不平、不満ですが)あれこれ少しずつ書き散らして自己満足しています。こんなことが気になるだけでもまあいいか、などと思ったりもしています。
 
 目が悪くなったせいか、手の感覚がおかしくなったせいか、生来の乱筆がいよいよひどくなり、これも閉口です。手紙もさぞ読みづらいことと思いますが、お許しください。
 
 教育ばかりでなく、政治も経済も、社会の仕組みも、明治以来営々と築かれてきた日本の社会生活(個人の考え方や生き方も)大きな曲がり角に近づきつつあるような気がします。
 どうなるだろうと興味もありますが、私のいのちの方はもう残り少ないので、変わった日本の姿を目にすることは出来そうにもありません。

 こんな寝言のような手紙を書く気になるのも貴君だけです。話したい友人はみんな亡くなったか、ボケたかです。
 時々、思いついたことや感じたことをノートの端に書き散らす位で自己満足することにします。字を書くことも少しはボケ防止の足しになってくれると有難いですね。

 出来るだけペンや筆を握るとともに、今年は声を出して本を読む、音読をしてみたいと考えています。長い間、黙読に慣れて来ましたが、独り暮らしでものを言うこともなくなりましたので、子供時代に戻って大きな声で、好きな文章の一節などを読んでみたいと思って、ぼつぼつ始めています。いつまで続くかわかりませんが、これもボケ防止だと思っています。

 乱筆を承知の上でこんな手紙を読ませるのは、さぞ御迷惑と思いますがお許しください。
 おかしな感想文(老人のくり言)2枚同封します(※)。お笑い草にしてください。
  まだまだ寒い日がありましょう。御自愛ください。

        二月十五日                 盛夫

 原田 雅司 様  
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※ 「老人のくり言2枚」の内の1枚はこのブログの「その3」で紹介した「誕生日に」と思われます。もう一つの感想文は今探しています。
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