自立した老いとは 恩師の書簡より       その12

  平成17年(‘05年)6月29日        加藤先生94歳
 
 今年もまた去年のように「暑い々々」とグチを言う季節になりました。雨が少ないだけ去年よりきびしそうです。
 サンデー毎日の夏の暑さが格別に身にしみて来ることでしょう。体調など格別に御用心ください。
                               小生のような
老躯には、この夏が越せるだろうかと思う不安までついてまわります。せいぜい昼寝でも多くして何とか体力維持につとめなければ暑気に負けてしまいます。
  歩行力だけでなく視力も日々おとろえて、細かい字を読むのがオックウ至極です。読書の楽しみが減って来るのは、ことに独居生活には残念なことです。

 幸い若い頃から少しずつ漢詩をかじって居たので、字の大きい漢詩を読むのだけは少々楽です。今頃になって漢詩になぐさめられようとは、思ってもいませんでした。なんでもやっておけば、いつか役立って呉れるものですね。
 先日漢詩を拾い読みしていたら、次のような詩に出会いました。悠々自適の生活を楽しむようになって、貴兄には興味が持てそうなので次に記してみます。

     銷夏詩      清・袁枚(エンバイ)

  不着衣冠近半年      衣冠をつけざること半年に近く
  水雲深処抱花眠      水雲深き所花を抱いて眠る
  平生自想無冠(官)楽   平生自ら思う無冠(官)の楽しみ
  第一驕人六月天      第一人におごる六月の天

(意訳)
  堅苦しい正装の役人生活をやめてから半年近くがたち
  今は清らかな水や雲の深い所できれいな花々に囲まれて眠る生活である。
  毎日官職のない気楽さを満喫しているが
  ことに人にいばってやりたいのは、この炎天下の六月の
  わが生活のすがすがしさである。

 たまには漢詩も楽しいものです。貴兄の近況にぴったりかと思って一首拾い出してみました。
 いつもの変わりばえの無い葉書に代えて一筆書きました。銷夏どころか一層暑くなりそうで恐縮
                         盛夫生
   原田雅兄
*******************************************************
上の書簡の2年前に原田さんに宛てた加藤さんの絵葉書です。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください